選び方・比較

2028年のストレスチェック義務化に向けた準備:小規模事業場の進め方

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

8分
目次

50人未満の事業場では、2028年4月1日までに、事業場ごとの対象者、実施者と実施事務従事者の役割、結果通知の経路を先に決めてから年間予定を組むことが準備の基本です。日付だけを追うより、誰が何を受け取り、どの記録を残すかを順番に整理すると、実施時の行き違いを減らせます。

現行では、常時50人未満の労働者を使用する事業場のストレスチェックは努力義務です。労働安全衛生法の改正により2028年4月1日から事業場規模を問わず義務となる予定であり、対象の判断は会社全体ではなく事業場単位で行います。

制度の確認日

労働安全衛生法第66条の10、同法附則第4条、令和7年法律第33号および令和8年政令第195号を確認しました。確認日:2026年9月21日。小規模事業場向けの実施手順は、厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月公表)」も参照します。

準備項目確認する単位主な役割確認する時点
対象者の整理事業場事業者・担当者実施時期を決める前
実施体制事業場実施者・実施事務従事者委託先との調整前
結果通知の経路労働者ごと実施者・連絡担当受検案内の前
面接指導と記録年間予定事業者・担当者実施後の流れを決める時

2028年に向けて最初に確認すること

施行日と現在の扱いを分けて確認する

2028年4月1日以後は、ストレスチェックの実施義務が事業場規模を問わない形になります。一方、現在の50人未満の事業場には、労働安全衛生法附則第4条による努力義務の扱いがあります。現在の運用を義務化後の状態と混同せず、準備の期限と現在の役割を分けて社内に共有することが大切です。

準備では、制度を急に始めるのではなく、対象者の確認、実施者の選定、結果通知の方法、面接指導の申出先を順に決めます。人員の増減や拠点の新設がある事業場では、毎年同じ対象範囲になるとは限りません。年間予定を作る前に、事業場の単位と常時使用する労働者の考え方を確認しておくと、後から体制を組み直す負担を抑えられます。

施行日までの期間は、規程や案内文を一度に完成させるための時間ではありません。まず担当者が現状を把握し、次に実施者や外部機関との連絡方法を決め、最後に受検者向けの案内へ反映するという順で進めます。年度替わりや人事異動の前後に確認日を置けば、予定と実態のずれにも気付きやすくなります。

2028年4月1日までの準備を示す事業場の建物と予定表
2028年4月1日までの準備を示す事業場の建物と予定表

準備を事業場単位で進める

拠点と人数を確認表にする

会社に本社、支店、店舗、工場などがある場合は、所在地や組織の実態に応じて事業場ごとに確認します。会社全体の人数だけを一つの数字として扱うと、どの場所で誰が実施体制を担うのかが見えにくくなります。拠点名、常時使用する労働者の人数、連絡担当、実施予定月を一覧にすると、準備状況を共有しやすくなります。

一覧には、異動予定者や新設予定の拠点を別欄で置く方法もあります。数の変化そのものを予測するためではなく、見直しの担当と時期を決めるためです。多拠点で共通の調査票を使う場合でも、結果通知や申出窓口が各拠点で機能するかを確認し、現場の連絡先を明確にします。

確認表は、拠点ごとに別の制度を作るためのものではありません。共通の役割や案内文を使いながら、対象人数、連絡担当、実施時期だけを拠点ごとに記録するためのものです。更新した日と確認した人を残しておけば、次の年に変更点だけを見直すことができ、引継ぎの際にも判断の経緯を共有できます。

事業場ごとの人数を記録する複数拠点の地図と拠点ピン
事業場ごとの人数を記録する複数拠点の地図と拠点ピン

実施者・実施事務従事者・事業者の役割を分ける

実施者は、ストレスチェックを実施する医師、保健師などの専門職です。実施事務従事者は、実施者の指示を受けて案内、回収、結果の処理などの事務を担います。事業者は体制を整え、必要な措置を講じる立場です。名称だけを決めるのではなく、受検案内、問い合わせ、結果通知、面接指導の申出を誰が扱うかまで役割表に書き分けます。

人事権を直接持つ監督的地位にある人は、検査の実施事務に従事できないこととされています。連絡担当として日程を知らせる役割と、個人結果に関わる実施事務を分けることで、担当者自身も判断に迷いにくくなります。外部機関へ依頼する場合も、事業場内に残る役割を確認しておくと、連絡漏れを防げます。

役割表には、担当者名だけでなく、不在時の連絡先と引継ぎ先も記します。受検案内を出す人、実施者へ事務連絡をする人、面接指導の申出を受け付ける人が同じとは限りません。作業を一人に集中させず、どの連絡が個人結果を含むかを区別しておくと、担当交代の際にも経路を保ちやすくなります。

実施事務従事者の役割を分ける衛生管理者のデスクとファイル
実施事務従事者の役割を分ける衛生管理者のデスクとファイル

年間運用を先に決める

結果通知と本人同意の経路を決める

ストレスチェックの結果は、まず本人に通知されます。本人の同意なく結果を事業者へ提供してはならないため、結果を通知する方法と、同意を得る場合の手順を別々に整理します。封をした通知、Web画面への案内、問い合わせ窓口などを決める際は、誰が個人結果に触れるのかを役割表と照らし合わせます。

同意がある場合とない場合で、結果の記録を扱う流れも異なります。事業場内の担当者が個別の内容を判断する運用にせず、実施者や委託先との間で、通知・保管・問い合わせの経路を事前に確認します。案内文には、受検の期間だけでなく、結果を受け取る方法と相談先を分かりやすく示します。

連絡用の予定表には、受検を促す案内と個人結果に関する問い合わせを同じ窓口に集めるかどうかも記載します。担当範囲を分ける場合は、問い合わせを受けた人が内容を聞き取らず、適切な窓口を案内する流れを決めます。受検者が迷わない案内と、担当者が不要な情報を受け取らない仕組みを両立させることが重要です。

本人同意の経路を確認する個人結果の通知封筒とWeb受検画面
本人同意の経路を確認する個人結果の通知封筒とWeb受検画面

面接指導・記録・見直しを予定に入れる

高ストレス者で医師等が面接指導を必要と認めた場合は、本人の申出を起点として面接指導を行います。受検期間だけを年間予定に置くのではなく、結果通知後の申出窓口、医師との調整、面接指導後の記録までを一連の予定として扱います。担当者が不在になる時期も見込み、引継ぎ方法を決めておくと運用が止まりにくくなります。

面接指導結果の記録は、労働安全衛生規則第52条の18第1項により5年間保存することとされています。保存先、閲覧できる担当、次回実施前に確認する事項を決め、実施後に一度振り返る機会を予定に入れます。記録の扱いは個人結果の通知とは別の工程として整理すると、必要な作業を把握しやすくなります。

面接指導結果を5年間保存する面談と施錠付き書庫
面接指導結果を5年間保存する面談と施錠付き書庫

2026年9月時点で、報告義務の対象を拡大する省令改正は公布されていません。ストレスチェックの実施義務は労働安全衛生法第66条の10、労働基準監督署への報告義務は労働安全衛生規則第52条の21という別の規定です。実施義務が2028年に広がることと、報告義務の対象を同じように扱わないよう、年度ごとに原典を確認します。

年間予定には、受検案内の発送日だけでなく、実施者との打合せ日、結果通知の開始日、相談先の周知日、面接指導の申出を受ける期間、記録を確認する日を置きます。実施後の振り返りでは、対象者の把握、案内の届き方、問い合わせの担当分けを確認し、次の実施までに直す担当と期限を決めます。こうした予定表は、制度の説明資料と役割表を結び付ける実務上の土台になります。

まとめ

小規模事業場の準備は、2028年4月1日という日付から逆算しつつ、事業場単位の確認表と役割表を作るところから始めます。受検案内、結果通知、面接指導、記録保存までを一つの年間運用として並べると、準備の漏れを見つけやすくなります。

対象者の考え方はストレスチェックの対象者で、実施体制の役割はストレスチェックの実施体制で確認できます。外部機関に依頼する前の確認点はストレスチェックの外部委託も参照してください。

よくある質問

Q. 会社全体では50人未満でも準備は必要ですか
必要です。2028年4月1日からは事業場規模を問わず実施義務となる予定のため、会社全体の人数だけで判断せず、各事業場の対象者と体制を確認します。現時点では50人未満の事業場は努力義務ですが、役割や結果通知の経路を先に整えておくと、施行時の準備を進めやすくなります。
Q. いつから外部機関へ相談すればよいですか
対象者の見込み人数、実施予定月、事業場内で担う連絡業務が整理できた段階で相談すると、説明を受けたい項目をそろえられます。実施者の体制、調査票、結果通知、面接指導、情報管理の流れを確認し、事業場内に残る担当を明確にしてから年間予定へ反映します。
Q. 施行日だけを確認すれば十分ですか
十分ではありません。施行日とあわせて、事業場ごとの対象者、実施者と実施事務従事者の役割、個人結果の通知、面接指導の申出先、記録の保存を確認します。制度の実施と労働基準監督署への報告は別の規定であるため、報告の要否も年度ごとに確認します。

出典

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