ストレスチェックの実施者と実施事務従事者の違い:誰が何を担うか
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
ストレスチェックの実施者と実施事務従事者は、同じ担当者を指す言葉ではありません。実施者は検査を実施する医師、保健師などであり、実施事務従事者は実施者の指示を受けて案内、回収、結果処理などの事務を担います。事業場内の連絡担当も含め、誰がどの情報を扱うかを分けて決めることが重要です。
役割を分ける目的は、肩書きを増やすことではありません。受検案内、Web受検画面の連絡、結果通知、面接指導の申出を円滑に進め、個人結果を必要のない人が扱わないようにすることです。厚生労働省の小規模事業場向け資料と労働安全衛生規則を2026年9月21日に確認して、役割分担の考え方を整理します。
| 役割 | 主な業務 | 立場の確認 | 個人情報の扱い |
|---|---|---|---|
| 実施者 | 検査の実施と結果通知 | 医師、保健師など | 検査結果を扱う |
| 実施事務従事者 | 実施者の指示による事務 | 人事権との関係を確認 | 必要な事務の範囲で扱う |
| 連絡担当 | 案内、日程、問い合わせの振り分け | 役割表で決める | 個人結果を聞き取らない |
| 事業者 | 体制整備と必要な措置 | 事業場の責任者 | 同意を得て受領する情報を定めた経路で扱う |
実施者と実施事務従事者は役割が異なる
実施者になれる者を確認する
労働安全衛生規則第52条の10第1項では、ストレスチェックの実施者を医師、保健師、所定の研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師と定めています。実施者は、検査を実施し、結果を本人へ通知する流れの中心となる役割です。事業場では、誰が実施者かを名称だけでなく、受検案内や結果通知の経路と合わせて確認します。
実施者を確認する場面では、連絡業務を担う人と同じ役割にしないことが大切です。受検用のIDを案内する、受検期間を知らせる、問い合わせを振り分ける業務は、実施者の指示を受けた事務や連絡担当が担うことがあります。実施者が担う判断と、事業場内の連絡を分けておくと、受検者に案内する窓口を明確にできます。

実施者の氏名や連絡方法を周知する必要がある場合は、受検者が制度上の問い合わせ先を見つけられる形にします。担当者が実施者の代わりに結果の内容を説明するのではなく、案内できる範囲と引継ぎ先を決めます。外部機関の実施者に依頼する場合も、事業場内で誰が日程や案内を担うかを別に整理します。
体制を変更する場合は、実施者の確認と同時に、受検者へ示す問い合わせ先を更新します。前年の案内文をそのまま使うと、担当者や外部機関の連絡先が古いまま残ることがあります。実施開始前に、実施者、実施事務従事者、連絡担当の名前ではなく役割が案内と役割表で一致しているかを確認すると、担当変更にも対応しやすくなります。
役割分担を作るときの確認点
実施事務従事者が担う範囲を整理する
実施事務従事者は、実施者の指示を受けてストレスチェックに関する事務を行う人です。調査票の配布や回収、Web受検画面の案内、結果通知に関する事務、記録の保存に関わる業務など、事業場の運用に応じた役割を担います。どの作業を誰が担うかを、実施者、実施事務従事者、連絡担当の三つに分けて記します。
役割表には、担当する業務だけでなく、受け取る情報の範囲と、判断が必要なときの連絡先を書きます。たとえば、受検期間の問い合わせは連絡担当が受け、結果の内容に関する質問は実施者または決められた窓口へつなぐ方法があります。事務の効率だけでなく、受検者が迷わず相談できることを基準に、連絡経路を作ります。

実施事務従事者の業務は、毎年同じとは限りません。紙の調査票からWeb受検画面へ変える、拠点を増やす、外部機関との連絡担当が変わる場合は、実施前に役割表を見直します。変更した業務を口頭で伝えるだけでなく、実施者が確認する内容、連絡担当が確認する内容、保存担当が確認する内容を分けて残すと、引継ぎがしやすくなります。
役割表には、作業の開始時点と終了時点も記します。たとえば、受検案内は開始前から結果通知まで、申出窓口は結果通知から面接指導の調整まで、保存担当は記録を作成した後から保存期間の確認まで関わります。業務の時期を分けておくと、同じ人が複数の役割を担う場合にも、何を優先して確認するかを整理できます。
事業場内の連絡担当を決める
連絡担当は、対象者への案内、受検期間の周知、問い合わせの振り分け、面接指導の申出先の案内を担います。実施者または実施事務従事者と連絡担当を同じ人にするかは、事業場の体制によります。どの形でも、連絡担当が個人結果を聞き取ったり、結果を判断したりする役割にならないように、案内できる範囲を決めます。
連絡担当の不在時には、誰が案内を引き継ぐかを決めます。複数拠点では、各拠点の担当と全体の連絡担当を分け、対象者への周知が届いたかを確認します。連絡担当の役割を一覧にしておけば、外部機関との打合せでも、事業場内で決めるべき事項と委託先へ確認する事項を区別できます。
連絡担当が受けた質問を記録する場合は、個人の結果や事情を詳細に書くのではなく、案内で補足が必要だった点を整理します。受検方法、問い合わせ先、申出の連絡方法に同じ質問が集まったときは、次回の案内文やWeb画面の説明を見直します。こうした振り返りは、実施者の判断と別に、事業場内の連絡を改善するためのものです。

人事権と個人結果を切り分ける
実施事務に従事できない立場を確認する
解雇、昇進、異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者は、労働安全衛生規則第52条の10第2項により、検査の実施の事務に従事してはならないとされています。人事部に所属しているかという部署名だけで決めるのではなく、直接の人事権を持つ監督的地位に当たるかを、組織図や職務分担で確認します。
この確認は、連絡業務まで全て任せられないという意味ではありません。制度案内や日程の周知を誰が行うかと、検査の実施事務に誰が従事するかを分けて整理します。人事権を持つ立場の人がどの範囲の連絡を担うか、実施者や実施事務従事者へ渡す情報は何かを役割表に記すと、担当者の判断をそろえやすくなります。

外部委託時に説明を受ける項目を並べる
外部機関へ委託する場合も、事業場内の役割は残ります。実施者の体制、実施事務の範囲、受検案内、結果通知、面接指導の申出先、記録の保存について、説明書で確認します。外部機関に任せる業務と、事業場内で連絡する業務を一つの言葉でまとめず、作業ごとに担当を決めます。
説明を受けた後は、実施者、実施事務従事者、連絡担当、保存担当を役割表へ反映します。受検者からの問い合わせが来たときに、誰が受け、どこへつなぐかを試しておくと、実施開始後の連絡を円滑にできます。外部委託は事業場内の担当をなくすことではなく、役割と連絡経路を明確にする機会になります。
外部機関との打合せでは、実施者の情報、事務の担当範囲、結果通知の方法、面接指導の申出先、保存に関する連絡先を順に確認します。事業場内の担当者が複数いる場合は、説明を受けた内容を一人だけが持たないよう、役割表へ転記して共有します。実施前の確認を積み重ねることで、受検者からの連絡を適切な窓口へつなげられます。

まとめ
実施者は検査を実施する専門職、実施事務従事者は実施者の指示を受けて事務を担う人です。連絡担当、保存担当、事業者の役割も分け、人事権を直接持つ監督的地位にある者が実施事務に従事しない体制を確認します。役割表を実施前に見直すことで、案内と情報管理を進めやすくなります。
ストレスチェックの実施体制、外部委託の確認項目、結果の本人同意、50人未満の義務化時期も参照してください。
よくある質問
- Q. ストレスチェックの実施者は誰ですか
- 実施者は、労働安全衛生規則第52条の10第1項に定める医師、保健師、所定の研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師です。検査の実施と結果通知に関わる役割であり、受検案内や日程の連絡を担う人とは分けて確認します。
- Q. 実施事務従事者は誰ができますか
- 実施事務従事者は、実施者の指示を受けて案内、回収、結果通知に関する事務、記録の保存に関わる業務を担います。担当者を決める際は、実施者との連絡経路、扱う情報の範囲、人事権を直接持つ監督的地位に当たらないかを確認します。
- Q. 人事担当者は結果を確認できますか
- 人事担当者が結果を確認する前提ではなく、本人への結果通知と事業者への提供の条件を分けて確認します。解雇、昇進、異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者は検査の実施事務に従事できないため、連絡業務と実施事務の役割を分け、事業場内で扱う情報の範囲を決めます。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)(laws.e-gov.go.jp)
- 2.小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(mhlw.go.jp)