法令・制度解説

産業医の選任は50人から必要?事業場単位と14日以内の手続き

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

9分
目次

産業医の選任義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業場にあり、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任します。会社全体の人数ではなく事業場ごとに確認し、選任後の報告方法もあわせて整理することが必要です。

ストレスチェックの実施義務と産業医の選任義務は、同じ制度ではありません。労働安全衛生法第13条、労働安全衛生法施行令第5条、労働安全衛生規則第13条に沿って、選任の基準と手順を確認します。[出典:労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条、労働安全衛生規則第13条、確認日:2026年9月6日]

産業医の選任が必要になる事業場

産業医の選任が必要かどうかは、常時使用する労働者の規模を事業場単位で確認します。労働安全衛生法施行令第5条は、労働安全衛生法第13条第1項の政令で定める規模を、常時50人以上の労働者を使用する事業場と定めています。[出典:労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条、確認日:2026年9月6日]

確認する事項整理のしかた
判断単位会社全体ではなく事業場ごとに確認する
規模要件常時50人以上の労働者を使用する事業場が対象
選任時期選任すべき事由が発生した日から14日以内
報告原則として電子情報処理組織を使用する
事業場単位で産業医の選任要件を確認する実務担当者
事業場単位で産業医の選任要件を確認する実務担当者

常時50人以上の基準を確認する

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせます。選任義務の根拠は労働安全衛生法第13条第1項であり、規模要件は労働安全衛生法施行令第5条で定められています。[出典:労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条、確認日:2026年9月6日]

人数の確認では、対象となる拠点で常時使用する労働者の状況を整理します。ストレスチェックの受検対象者を数える基準とは別に、選任義務の対象となる事業場かを確認します。

会社全体ではなく事業場単位で確認する

選任義務の規模は、会社全体の在籍者数だけで判断しません。工場、事務所、店舗など、場所的に分かれた事業場ごとに、常時使用する労働者の状況を確認します。[出典:労働安全衛生法施行令第5条、厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」p.6、確認日:2026年9月6日]

複数の事業場がある場合は、各拠点の人数、所在地、連絡体制を一覧にします。選任が必要となる事由がいつ発生したかを残しておくと、次の手続きの起点を確認しやすくなります。

複数の事業場ごとの人数と連絡体制を確認する担当者
複数の事業場ごとの人数と連絡体制を確認する担当者

選任後に確認する手続き

選任後は、選任期限、報告方法、事業場規模に応じた専属・複数選任の要件を確認します。現行の労働安全衛生規則は2026年8月1日施行版であり、選任と報告に関する根拠は同規則第13条です。[出典:労働安全衛生規則第13条、確認日:2026年9月6日]

電子申請は2025年1月1日から原則となっていますが、当分の間の経過措置もあります。電子申請の原則と書面報告が認められる条件を、同時に確認します。[出典:じん肺法施行規則等の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第45号)附則第2条、基発0328第15号、確認日:2026年9月6日]

選任期限と報告手順を確認する実務担当者
選任期限と報告手順を確認する実務担当者

14日以内に選任する

労働安全衛生規則第13条第1項第1号は、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任することを定めています。該当する事業場になった日と、選任に必要な社内の確認日を分けて記録します。[出典:労働安全衛生規則第13条第1項第1号、確認日:2026年9月6日]

選任の手順は、個別の事業場の事情によって確認事項が異なります。一般的な制度説明と、個別の該当判断や書類の作成は分け、必要に応じて所管窓口や専門家に確認します。

電子情報処理組織による報告を確認する

産業医の選任に関する報告は、労働安全衛生規則第13条第2項により、電子情報処理組織を使用して所轄労働基準監督署長へ行うことが定められています。2025年1月1日から電子申請が原則義務化されているため、まず電子申請を前提に準備します。[出典:労働安全衛生規則第13条第2項、厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」、確認日:2026年9月6日]

ただし、じん肺法施行規則等の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第45号)附則第2条は、労働安全衛生規則第13条第2項と様式第3号について、当分の間なお従前の例によることができるとしています。基発0328第15号も、電子申請を行う環境が整っていない場合には、当分の間の経過措置として書面による報告ができると示しています。[出典:じん肺法施行規則等の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第45号)附則第2条、厚生労働省労働基準局長通達「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令の公布について」(基発0328第15号)第3の1のウ、確認日:2026年9月6日]

専属産業医と複数選任の基準を確認する

労働安全衛生規則第13条は、常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または一定の有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場では、専属の産業医を選任することを定めています。常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医を選任します。[出典:労働安全衛生規則第13条第1項第3号・第4号、確認日:2026年9月6日]

選任義務を確認しないまま放置した場合でも、直ちに罰金が科される仕組みではありません。産業医の未選任は労働安全衛生法第13条第1項違反として同法第120条第1号の対象ですが、行政指導→勧告→命令の手順で確認されます。[出典:労働安全衛生法第13条第1項・第120条第1号、確認日:2026年9月6日]

ストレスチェックとの関係を整理する

ストレスチェックの実施義務が広がることと、産業医の選任義務の規模要件は別に確認します。制度の改正日と、事業場で必要な手続きを混同しないよう、対象と時期を分けて整理します。

2025年5月14日に公布された令和7年法律第33号により、労働安全衛生法附則第4条を削る改正規定の施行期日は、令和8年政令第195号で2028年4月1日と定められました。これはストレスチェックの実施義務に関する改正であり、労働安全衛生法施行令第5条の産業医選任の規模要件を変える規定はありません。[出典:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)附則第1条第6号、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第195号)、確認日:2026年9月6日]

ストレスチェックと産業医選任の基準を分けて確認する担当者
ストレスチェックと産業医選任の基準を分けて確認する担当者

2028年以降も二つの義務は別に考える

2028年4月1日から広がるのは、ストレスチェックの実施義務です。産業医の選任義務は、引き続き常時50人以上の労働者を使用する事業場にかかる整理であり、両方の制度を同じ人数基準として扱いません。[出典:労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条、令和7年法律第33号、令和8年政令第195号、確認日:2026年9月6日]

ストレスチェックの対象者や労基署への報告基準にも別の考え方があります。人数の数え方を確認する際は、対象者と報告要否を区別して確認します。

費用・契約の確認へつなげる

選任義務の有無を整理した後は、対象事業場、訪問頻度、業務範囲、連絡体制を確認します。これらの条件をそろえてから、産業保健サービスを提供する法人の説明内容を確認すると、必要な体制を整理しやすくなります。

費用の条件を整理する際は、産業医の費用と見積条件を参照してください。ストレスチェックの対象者の数え方は、ストレスチェックの対象者で確認できます。

選任後の費用条件と連絡体制を整理する担当者
選任後の費用条件と連絡体制を整理する担当者

まとめ

産業医の選任は、常時50人以上の労働者を使用する事業場で必要になり、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行います。事業場単位で規模を確認し、電子申請を原則としつつ当分の間の書面報告の経過措置も確認することで、制度上の手順を整理できます。

関連する制度は産業医の費用と見積条件、50人未満のストレスチェック義務化、ストレスチェックの対象者で確認できます。制度や掲載内容へのご意見はお問い合わせへ、カテゴリ一覧は法令・制度解説をご覧ください。

よくある質問

Q. 産業医の選任は50人から必要ですか?
産業医を選任すべき事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。会社全体ではなく、事業場ごとに確認します。[出典:労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条、確認日:2026年9月6日]
Q. 選任はいつまでに行いますか?
産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任します。選任報告は2025年1月1日から電子申請が原則ですが、労働安全衛生規則第13条第2項も令和6年厚生労働省令第45号附則第2条による当分の間の経過措置の対象であり、書面による報告も可能です。[出典:労働安全衛生規則第13条第1項第1号・第2項、じん肺法施行規則等の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第45号)附則第2条、基発0328第15号、確認日:2026年9月6日]
Q. 2028年以降は50人未満にも産業医が必要ですか?
令和7年法律第33号は、ストレスチェックの実施義務を広げる改正を含みますが、産業医選任の規模要件を変える改正はありません。2028年4月1日以降も、産業医の選任義務は常時50人以上の事業場にかかる整理です。[出典:労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条、令和7年法律第33号、令和8年政令第195号、確認日:2026年9月6日]

出典

  1. 1.
  2. 2.
    労働安全衛生法(laws.e-gov.go.jp)
  3. 3.
    労働安全衛生法施行令(laws.e-gov.go.jp)
  4. 4.
    労働安全衛生規則(laws.e-gov.go.jp)
  5. 5.
  6. 6.
  7. 7.
  8. 8.