ストレスチェックの罰則とは?未実施・報告・産業医未選任の違い
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
ストレスチェックの未実施そのもの、労働基準監督署への報告義務違反、産業医の未選任は、同じ罰則として扱われません。2026年9月21日に確認した労働安全衛生法では、ストレスチェック未実施そのものを直接罰する規定はありませんが、報告義務違反と産業医未選任にはそれぞれ罰則の根拠があります。
「直接の罰則がない」ことは、実施しなくてよいという意味ではありません。現行で50人未満の事業場は努力義務であり、2028年4月1日からは事業場規模を問わず実施義務となる予定です。実施、報告、選任のどの義務を確認しているかを分けることが、正確な対応の出発点になります。
根拠と確認日
労働安全衛生法第13条第1項、第66条の10、第100条第1項、第120条第1号・第5号、労働安全衛生規則第52条の21を確認しました。確認日:2026年9月21日。第120条第5号は「第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつたとき」を対象に含みます。
| 行為 | 直接の罰則の有無 | 根拠 | 担当者の確認事項 |
|---|---|---|---|
| ストレスチェックの未実施 | 未実施そのものへの直接罰則規定はない | 第66条の10、第120条各号 | 実施義務と現在の対象範囲 |
| 労基署への未報告・虚偽報告 | 50万円以下の罰金の対象となり得る | 第100条第1項、第120条第5号 | 第52条の21の報告要否 |
| 産業医の未選任 | 50万円以下の罰金の対象となり得る | 第13条第1項、第120条第1号 | 事業場単位の選任要否 |
| 面接指導の未実施 | 未実施そのものへの直接罰則規定はない | 第66条の10、第120条各号 | 申出から実施までの手順 |
罰則の有無は行為ごとに異なる
まず未実施・未報告・未選任を分ける
罰則を確認するときは、「ストレスチェックを実施していない」という一つの言葉で整理しないことが大切です。検査の実施は労働安全衛生法第66条の10、検査結果等の報告は労働安全衛生規則第52条の21、産業医の選任は同法第13条第1項に根拠があります。対象となる事業場、手続、罰則の有無が異なるためです。
現行では、常時50人以上の労働者を使用する事業場にストレスチェックの実施義務があります。50人未満の事業場は当分の間努力義務ですが、2028年4月1日からは事業場規模を問わず実施義務となる予定です。実施義務の対象が変わることと、労基署への報告義務の対象を同じものとして扱わず、原典の規定ごとに確認します。

担当者が確認表を作る場合は、実施予定、報告の要否、産業医の選任状況を別の行にします。担当者が一人でも、期限、提出先、必要な記録は同じではありません。制度を始める前に役割と予定を分けておくと、未実施への対応と、提出漏れへの対応を一緒に判断する場面を減らせます。
確認表には、事業場名、常時使用する労働者数、実施予定月、報告を確認する日、産業医の選任状況、担当者を置きます。人数の変化が見込まれる拠点では、年度の途中でも見直し日を決めます。法令の条文だけを記録するのではなく、事業場で次に行う作業を対応させることで、制度上の違いを日常の運用へ反映できます。
ストレスチェックの未実施をどう整理するか
直接の罰則と行政対応を混同しない
労働安全衛生法第120条各号には、第66条の10が列挙されていないため、ストレスチェックの未実施そのものを直接罰する規定はありません。これは、実施義務を軽く扱ってよいという意味ではありません。対象となる事業場は、実施時期、実施者、結果通知、面接指導の申出先を整え、制度を実施できる体制を維持する必要があります。
実務上は、労働基準監督署による臨検監督、指導、是正報告という流れで確認されることがあります。未実施だから直ちに罰金が科されると説明するのは正確ではありません。事業場は、指摘を受けてから急いで手順を作るのではなく、対象者、実施体制、年間予定、記録の保存先を日常の衛生管理として確認します。
実施の遅れが見つかった場合は、いつ実施するかだけでなく、誰が実施者と連絡し、誰が対象者へ案内し、結果通知後の申出先をどう示すかを確認します。予定を作り直すときは、過去の受検案内や結果を個人別に集めるのではなく、制度の進行に必要な担当と期日を整理します。事業場の規模や拠点ごとの状況に応じて、確認表を更新します。

報告義務違反・虚偽報告を別に確認する
労働安全衛生規則第52条の21は、常時50人以上の労働者を使用する事業者に、検査及び面接指導結果の報告を求めています。この報告をしない、または虚偽の報告をした場合は、労働安全衛生法第100条第1項と第120条第5号の関係で、50万円以下の罰金の対象となり得ます。検査の未実施とは別に、報告の手続を確認します。
報告では、実施年月、受検者数、面接指導を受けた人の数、実施者の区分、集団分析の実施の有無などを確認します。報告書を作る担当、確認する担当、提出する担当を分け、実施後にまとめて探さなくてよいよう年間予定に置きます。電子申請が原則であることと、当分の間の書面報告の経過措置も、提出前に原典で確認します。
報告の準備では、実施時点の情報と提出時点の情報を混ぜないことも重要です。受検期間が終わったら、記録を確認する日、報告書を作成する日、提出する日を決めます。集団分析は努力義務ですが、その実施の有無は報告事項に含まれます。実施したかどうかを確認する担当をあらかじめ決め、報告書の記載を最後に一人だけで判断しないようにします。

産業医未選任との違い
選任義務と罰則の根拠を確認する
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、労働安全衛生法第13条第1項により産業医を選任しなければなりません。選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任することとされており、未選任は同法第120条第1号により50万円以下の罰金の対象となり得ます。ストレスチェック未実施そのものとは、条文上の整理が異なります。
産業医の選任要否も、会社全体の人数ではなく事業場単位で確認します。拠点ごとの常時使用する労働者数、選任が必要になった日、選任後の報告方法を一覧にし、退任や担当変更がある場合の連絡先も決めます。ストレスチェックの実施体制と産業医の選任は関係しますが、同じ期限や報告として扱わないことが必要です。

是正に向けて事業場で確認する事項を並べる
実施、報告、産業医の選任に不備が見つかったときは、まずどの規定に関する確認かを分けます。実施体制では対象者、実施者、結果通知、面接指導の申出先を確認します。報告では対象事業場、報告期間、実施内容、提出方法を確認します。産業医では事業場ごとの人数、選任時期、報告の状況を確認します。
是正のための確認表には、現在の状況、担当者、必要な資料、次に確認する日を記します。罰則を強調して担当者を急がせるより、必要な手続を順番に整える方が、記録と連絡の漏れを防げます。労基署からの指導を受けた場合も、指摘された事項と事業場で確認した内容を分け、再発しないための年間予定へ反映します。
手続を整えた後は、実施者、連絡担当、保存担当の役割が一致しているかを確認します。実施だけを終えて報告の担当が決まっていない、産業医を選任しても選任後の報告を確認していない、といった状態を残さないことが大切です。年に一度の見直しでは、実施・報告・選任の三つを別の項目として確認し、変更があれば担当者へ共有します。

まとめ
ストレスチェックの未実施そのもの、労基署への未報告・虚偽報告、産業医未選任は、根拠条文と罰則の有無が異なります。直接の罰則がないことを制度対応が不要という意味にせず、実施義務、報告義務、選任義務を事業場単位で分けて確認します。
労基署への報告の考え方、産業医選任の要件、50人未満の義務化時期、ストレスチェック報告の電子申請も参照してください。
よくある質問
- Q. ストレスチェックを実施しないと直ちに罰金ですか
- ストレスチェックの未実施そのものを直接罰する規定は、労働安全衛生法第120条各号に第66条の10が列挙されていないことから確認できません。直ちに罰金と説明するのは正確ではありません。対象となる事業場は、実施義務、実施体制、結果通知、面接指導の流れを確認し、制度を実施できる状態にします。
- Q. 報告を忘れた場合はどうなりますか
- 常時50人以上の労働者を使用する事業者の報告は、労働安全衛生規則第52条の21に定められています。未報告または虚偽報告は、労働安全衛生法第100条第1項と第120条第5号の関係で50万円以下の罰金の対象となり得ます。実施後に報告の要否、提出時期、担当者を確認します。
- Q. 産業医がいない場合も同じ扱いですか
- 同じ扱いではありません。常時50人以上の労働者を使用する事業場で産業医を選任しないことは、労働安全衛生法第13条第1項と第120条第1号の関係で50万円以下の罰金の対象となり得ます。ストレスチェックの未実施、報告義務違反、産業医未選任を別々に確認します。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)(laws.e-gov.go.jp)
- 2.労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)(laws.e-gov.go.jp)
- 3.労働安全衛生法等の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)(mhlw.go.jp)