ストレスチェックを受けない選択はできる?受検義務と会社の対応
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
ストレスチェックでは、労働者に受検義務は課されていません。一方で、制度を有効にするためには対象者全員が受検することが望まれるため、事業場は受検を強制するのではなく、制度の目的、受検方法、相談先を分かりやすく案内することが重要です。
担当者は、受検しない人の事情を集めることより、受検案内と面接指導の申出に関する連絡を分けて整える必要があります。結果通知、本人同意、面接指導の申出はそれぞれ別の手続であり、受検の有無だけで一律に扱わない体制を作ります。
根拠と確認日
労働安全衛生規則第52条の9、第52条の10第1項、第52条の12、第52条の15、第52条の16を確認しました。確認した版:2026年8月1日施行版。確認日:2026年9月21日。労働者に受検義務が課されていないことは、厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月公表)」で確認しています。
| 論点 | 制度上の位置付け | 担当者が確認すること | 避ける取扱い |
|---|---|---|---|
| 受検 | 労働者に受検義務はない | 受検方法と期間の周知 | 受検を前提に個人事情を聞き取ること |
| 結果通知 | 遅滞なく本人へ通知 | 通知方法と問い合わせ先 | 個人結果を連絡担当へ集めること |
| 面接指導 | 高ストレス者の申出が起点 | 申出窓口と日程調整 | 申出理由を求めること |
| 面接指導の申出 | 申出を理由とする不利益取扱いは禁止 | 連絡経路と記録 | 申出を人事上の判断と結び付けること |
受検義務と対象者の範囲を分ける
労働者に課される受検義務の有無を確認する
ストレスチェックの実施は事業者に求められる制度ですが、一般定期健康診断とは異なり、労働者に受検義務は課されていません。担当者は、受検しない人を制度違反として扱うのではなく、対象者が受検方法と相談先を理解できる案内を整えます。受検を促す案内と、個人の事情を聞き取ることは別の対応です。
対象者の範囲は、受検義務の有無とは別に確認します。案内を送る対象、受検期間、問い合わせ先を事業場ごとに整理し、勤務場所や雇用の状況に変更があれば案内前に見直します。受検の意思を尋ねる連絡を先に行うより、全員に同じ制度説明を届け、質問を受ける窓口を用意する方が、初回の案内も継続運用も整えやすくなります。

受検を希望しない場合でも、担当者は本人の判断を急がせず、受検期間と相談先を伝えます。案内を読み直す時間を持てるようにし、受検方法に関する質問は実施者や決められた窓口へつなぎます。受検状況を共有する会議では、全体の進み具合や案内の到達状況を扱い、個別の理由や結果を議題にしない進め方が適しています。
対象者の一覧を扱う担当は、受検済みかどうかの事務連絡と、個人の健康状態に関する情報を同じ表に記録しないようにします。案内を再送するか、問い合わせ先を改めて知らせるかといった判断に必要な情報だけを扱うことで、連絡の目的を明確にできます。担当者の不在時に誰が案内業務を引き継ぐかも、受検開始前に決めておくと安心です。
受けない意向があるときの案内
対象者への周知と受検勧奨を分ける
周知では、ストレスチェックを実施する目的、対象者、受検期間、受検方法、問い合わせ先を知らせます。受検勧奨は、周知した内容を確認できるよう再案内することです。受検しない人に対して理由の提出を一律に求めるのではなく、制度の案内が届いているか、受検方法に分かりにくい点がないかを確認します。
勤務形態や勤務場所が異なる人がいる事業場では、紙、メール、Web画面など複数の案内経路を使う場合があります。担当者は、同じ内容が届くよう文面と期日をそろえ、質問の窓口を明示します。再案内をする際も、個人結果や健康状態に触れず、受検期間と相談先を知らせる形にすると、連絡の目的を保ちやすくなります。
周知の記録には、案内を出した日、対象となる勤務場所、問い合わせ先を残します。受検しない人を区別するためではなく、案内が届かなかった経路を次回見直すためです。事業場内の掲示や短時間勤務者向けの連絡方法など、普段の周知方法と合わない部分があれば、次の実施前に方法を変える担当と時期を決めます。

個人結果を前提にしない連絡の設計
受検案内を担当する人は、個人結果を前提に連絡をする役割ではありません。結果は遅滞なく本人へ通知されるため、受検前の案内、結果の受け取り方、面接指導の申出先を分けて伝えます。問い合わせを受けた担当者が個人結果の内容を聞き取らず、実施者または決められた窓口へつなぐ流れを作ります。
同意がある場合の事業者への結果提供と、受検案内の担当も混同しないようにします。誰が対象者へ案内を送るか、誰が結果通知の質問を受けるか、誰が申出の連絡をつなぐかを役割表に記すと、担当変更があっても説明をそろえられます。連絡業務と個人結果の取扱いを分けることで、受検者も相談先を選びやすくなります。
役割表には、問い合わせの内容をどこまで受け付けるかも書きます。たとえば、受検用のIDや受検期間に関する質問は連絡担当が受け、結果の見方や面接指導の相談は別の窓口へつなぐ方法があります。連絡担当が回答を抱え込まず、本人が必要な案内にたどり着けるよう、案内文と引継ぎ先を一致させます。

面接指導の申出と不利益取扱い
申出が起点になる場面を確認する
ストレスチェックの面接指導は、高ストレス者で医師等が必要と認めた人からの申出が起点です。受検したすべての人に一律に面接を行う制度ではないため、担当者は面接指導を希望する場合の連絡先と日程調整の流れを案内します。申出の相談と、結果の詳細を聞き取ることを同じ担当に集めない方法を確認します。
面接指導の申出を受けた後は、医師による面接の調整、必要な記録、事業者が確認する手順を順に進めます。受検しなかったことと、面接指導を希望しないことも別の判断です。受検案内の段階から、結果通知後に利用できる相談先と申出先を示しておくと、本人が必要なときに連絡しやすくなります。

申出を理由にした取扱いを避ける
労働安全衛生法第66条の10第3項は、面接指導の申出をしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと定めています。担当者は、申出を受けた事実を人事上の評価や配置の判断に結び付けず、連絡、日程調整、記録の役割を分けます。申出窓口を周知する際も、連絡した人が不利益を受けないことを制度説明に含めます。
実施後の記録は、労働安全衛生規則第52条の18第1項により5年間保存します。保存担当と閲覧範囲を決め、面接指導の申出を受けた人の情報が不要な範囲へ広がらないようにします。面接指導に関する連絡経路と、受検案内の経路を分けておくと、担当者が扱う情報を整理しやすくなります。
面接指導の申出を受ける窓口は、連絡方法、受付後の引継ぎ、日程調整の担当をあらかじめ示します。申出をためらわせるような説明をせず、利用できる手続として知らせることが重要です。実施後には、申出窓口の案内が結果通知に含まれていたか、担当者が予定どおりに連携できたかを振り返り、次回の案内へ反映します。

まとめ
ストレスチェックでは、労働者に受検義務は課されていません。事業場は対象者へ制度を周知し、受検方法、結果通知、面接指導の申出先を分けて案内します。面接指導の申出を理由とする不利益な取扱いを避け、連絡業務と個人結果の取扱いを分けることが重要です。
ストレスチェックの対象者、結果の本人同意、実施体制の整理、面接指導の費用も確認してください。
よくある質問
- Q. 受けない人に会社は受検を求められますか
- 受検を案内し、制度の目的や受検方法を周知することはできます。ただし、労働者に受検義務は課されていません。受検しない人を責める連絡ではなく、受検期間、問い合わせ先、結果通知後の相談先を分かりやすく示し、受検を検討できる環境を整えます。
- Q. 受検しない理由を提出してもらう必要はありますか
- 受検義務が課されていないため、受検しない理由を一律に提出させる前提で案内する必要はありません。担当者は個人の事情を聞き取ることより、案内が届いているか、受検方法や問い合わせ先が分かりやすいかを確認し、質問があれば決められた窓口へつなぎます。
- Q. 面接指導を希望しない場合はどうなりますか
- 面接指導は、高ストレス者で医師等が必要と認めた人の申出が起点です。希望しない場合も、受検の有無や結果の通知とは別に扱います。面接指導を希望する場合の申出先と、申出を理由とする不利益な取扱いが禁止されていることを、結果通知の案内で確認します。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)(laws.e-gov.go.jp)
- 2.労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)(laws.e-gov.go.jp)
- 3.小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(mhlw.go.jp)